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見出しキロドネラ症

キロドネラ症は、秋から冬にかけての低水温期に発生しやすい病気である。古くはキロドンの名で知られている原生動物の繊毛虫類キロドネラ・シプリニ(Chilodone lla.cyprini)が原因で、主に体表や鰓、時おり鰭に寄生して起きる。
キロドネラは肉眼では見えないが、小判形、または馬蹄形をしていて扁平、背中はやや突出している。繊毛は腹面と囲口部にあって、これを動かし、ゆっくりと這うように、またはクルクルと回るように動く。体長が30〜80μで40〜100倍の顕微鏡で確認することができる。
キロドネラ属には熱帯性淡水魚の寄生虫として知られているものもあるが、こちらが20℃以上で繁殖するのに対して、錦鯉や金魚に寄生するキロドネラ・シプリニは低水温でしか繁殖しない。また、キロドネラは繁殖に不適な環境では自らシストを作り、その中で長時間生存し、繁殖の好機がくるのを待つことができる。






【発生時期】
20℃以下、特に5〜10℃の水温で分裂して増え、爆発的に発生することが多い。越冬期間中の低水温に加え、摂餌不良による鯉の体力の低下、春先の管理不十分な池、過密飼育、汚染池などが発生の原因となる。
特に土池では、水温が上がり始める春先に、キロドネラが原因で大量に斃死することもあり、かなり大きな被害をもたらす。稀に六月、七月の稚魚に寄生することもあるが、大型魚でも死亡させる力をもっている。

症状

病魚の外観上はイクチオボド症、トリコジナ症と似ていて区別しにくい上、混合寄生していることが多い。

【体表に寄生した場合】
食欲が減退し、水面近くを浮遊し、運動をしなくなる。外観的には、他の外部寄生虫による病気と同様、白地が充血して焼けたように見えるようになり、また、体表の粘液の分泌が多くなると、やがて白濁して白雲症状を呈するようになる。

【鰓に寄生した場合】
呼吸困難から注水口に集まる。頭だけが異様に大きく、体は痩せて細くなり、鰓が白濁し、呼吸困難に陥る。
重症魚になると、力がなくなるので、排水部に寄るようになり、体表や鰓の粘液が白濁して、さらに進むと、粘液が落ちて体表がザラザラし、充血、出血がみられるようになる。
これらの症状は他の病気(特にトリコジナ症、イクチオボド症、ダクチロギルス症、細菌性白雲病など)でも現れるため、正確には顕微鏡で寄生虫の確認をするほうが望ましい。






治療

キロドネラ症の外観症状は、トリコジナ、イクチオボドや、ダクチロギルスなどの外部寄生虫による症状と似ている上、それらと混合寄生している場合が多い。これらの駆除に共通して効果がある過マンガン酸カリウム、食塩、ホルマリンを用いた駆虫法を以下に挙げる。

  • 過マンガン酸カリウム……基本的な用い方は、水温15℃以下の時は、1トン当たり2g、水温15℃以上の時は、水1トン当たり3gを溶解して薬浴、または散布。
  • 過マンガン酸カリウムの短時間薬浴……成魚で体力のある魚に限り、水1トン当たり5gで1時間の薬浴を、二日置いて三回以上繰り返す。時間厳守。鯉の様子を見ながら、鼻上げなどの異常が見られたら即座に中止する。または、同様に体力のある成魚に限り、水1トン当たり200gで3分間の薬浴。時間厳守。鼻上げなどの異常が見られたら即座に中止し、清水に戻す。
    過マンガン酸カリウムは、汚れた水の池では効力が半減し、鰓の組織を破壊する薬害があるので、薬浴に用いる水を清浄にしてから使用する。薬浴時間を超過すると、薬害、中毒症状を発生することがあるので、時間を厳守すること。池で用いる場合は、薬液の排出が容易で、新水の注水が十分にできる条件が必要。また、過マンガン酸カリウムは酸化剤のため、容器や池中の金属類は錆が生じやすく、手や衣服に付けば侵される。使用に際しては環境汚染に注意を払う。
  • ホルマリン……水1トン当たり、20〜30撃ナ最低三日間以上の薬浴。ただし、当才魚の場合は25撃限度とする。薬浴中は注水を止めるので、酸素欠乏に注意する。
    ホルマリン(ホルムアルデヒド35%溶液)は人間に対しても毒性が強く、発ガン性もあるとされるため、取り扱いは慎重に行いたい。また、植物やラン藻類、藻類を枯死させるため、水変わりを起こす危険性もある。揮発ガスを吸い込まないように気をつけることはもちろんのこと、薬浴水の処理や、薬剤を溶かした池水の排水にも注意を払わなければならない。薬浴に用いる場合は、使用量を誤ると体表や鰭に充血・出血を見ることがある。また食塩との併用は避けなければならない。
  • 2%食塩水……水1トン当たり食塩20sで10〜20分間の薬浴。時間厳守。鯉の様子を見ながら行ない、異常が見られたら即座に中止する。

予防

キロドネラは、新しい鯉を入れる時、魚体や水とともに池に侵入したりするが、自然に発生することもある。
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